岡山国体映像を受信して 〜中国−3(鳥取)での受信記録
鳥取環境大学での受信
ここでは,鳥取県での岡山国体の映像を受信した際の簡単な報告をしておきます.
全般
今回の中継では,40チャンネルを超えるDVTS映像と1つのHD映像が配信されました.JGN2中国−3ノードでは,この映像を受信しまし
た.中国-3へは100Mbpsのネットワークが提供されています.このため,同時には最大でも3チャンネルの映像しか受信できません.現実には,映像配
信以外にも定常的に使用しているグループがあるため,日中は3チャンネルの同時受信を行うと,パケットロスが多少なりとも発生する傾向が観察できました.
2チャンネルの映像を受信している間は良好な映像でした.
当初は,こちらに示したような現象も見られましたが,対処していただいた結果,安定したトラヒックとなりました.
後述する鳥取情報ハイウェイへの再配信との関係で,1チャンネルはHDを常に受信し,DVTSを常時1チャンネル,場合によっては2チャンネル以上を受信しました.
写真は何枚かとりました.こちらをご覧ください.
授業での使用
10月26日1限に鳥取環境大学大学院の授業で「ネットワーク基礎論2」がありました.ちょうどIPv6でのアドレス構造が話題となっているときでした
ので,マルチキャストアドレスの実例として紹介させていただきました.またマルチキャストルーティングはもう少し先に話題になる予定ですが,実際にマルチ
キャストとはどんなものかを事前に経験させておくことにより,マルチキャストルーティングが話題になったときに興味が深まると考えて,30分ほどの時間で
実際に学生に体験をさせました.こちらで用意していたPCで実際に映像をみること,DVcommXPの岡山国体バージョンを用いて,チャンネルの切り替え
=受信するマルチキャストアドレスの変更を行わせました.理想的にはチャンネルの切り替えが行われるとデータも瞬時に切り替わっていくはずなのですが,現
実には多少の時間遅れが発生することを体験させておきました.
授業でチャンネルの切り替えを比較的頻繁に行ったので,一時的に3チャンネル以上の映像を受信する期間が発生しました.この期間は当然のことながらパ
ケットロスが発生し,映像にはブロックノイズとして観測されました.mpegのような圧縮が行われているときに,途中のデータが欠落するとどのようなこと
になるのかを示すいい例となりました.HD映像を継続的に受信しながらDVTS映像のチャンネルきりかを行ったのですが,先ほど述べたように伝送路の容量
を超える時間がありました.その結果はパケットロスという形で観測されるのですが,このパケットロスは現状ではすべての通信(=映像)に対して均等に発生
します.このためHD映像も影響を受け,ブロックノイズという形で観測されることになりました.
なお,この授業の受講生は数名でした.これは広島市立大学の前田先生がMLにいわれたことに刺激されて行いました.
鳥取情報ハイウェイへの再配信
今回,HD映像はVLCというソフトを使用して受信を行いました.このVLCというソフトウェアの機能には映像ストリームを受信して,画面に映像として
再生する機能だけではなく,映像ストリームを発信する機能も備えています.この機能に気づいたのは比較的最近で,できること,できないことはいまだにはっ
きりしていません.10月24日に簡単な実験をしてみると,ネットワークから受け取ったmpeg2ストリームを再配信できることがわかりました.そこで,
一台PCを用意して,IPv6マルチキャストで受信した映像ストリームをIPv4マルチキャストで鳥取県情報ハイウェイに送信する実験を行いました.この
実験は鳥取県情報センターにご協力をいただいて実施しました.結果としては,良好に映像ストリームの送信を行うことができることを確認できました.また鳥
取県情報センター様だけでなく,鳥取県教育センター様,鳥取短期大学様でも映像ストリームを受信することができ,良好な映像であったことが確認できていま
す.再配信しているマシンの写真を撮ってみました.単なるPCの写真になってしまいましたが.そして,鳥取県情報センター様での受信状況の写真も撮影していただきました.
VLCでできること
VLCというソフトウェアについて,HD映像のmpegデータを受信し,再生する以外に,今回新しく発見してかつ有用であると考えられるものがありました.おもに映像ストリームを配信する機能とPCに接続されたカメラから映像を取り込む機能の2つがあげられます.
映像ストリームを配信する機能については,鳥取情報ハイウェイへの再配信を行うことによって,実用的なものであることを確かめることができました.映像
ストリームを配信する際に,指定を行うことによって別の形式に変更することもできるようです.例えばmpeg2からmpeg4に変換するとか,ビットレー
トを変更するとか.一度デコードして,再びエンコードすることになるので映像ストリームの変換に使えるかどうかは不明なのですが,いろいろと使える可能性
を感じました.でも,CPUパワーがかなり必要になるのではと思います.
もう一つ,有用性が高いと思われる機能があります.それはWindows版のVLCでは,Windowsが認識するビデオデバイスからデータを取り込み,PCで表示したり,ストリームをネットワークに出力できたりする点です.VLCのWebサイトに
はLinux版でもできるようなことを書いてありますが,当方では確認をしていません.手元にあるIEEE1394デバイスを試しに接続してみると次のこ
とがわかりました.まず,DVカメラ(sony
TRV20)を接続してみました.winは認識し,VLCも映像が取り込み,自分の画面に表示することができました.また,DV形式からmpegに形式変
換をしてネットワーク上の他のPCに送ってみたところ,受信できました.ただ,mpegの設定をしないといけないことと,時間遅れがかなり大きいというの
がわかりました.もちろん,カメラが接続されているPCの性能はそれなりのものが必要となるようです.
手元にハイビジョンカメラがありましたので,これも接続してみました.カメラはsonyのHDR-HC1です.winはカメラとして認識しました.
VLCからも認識できました.さらに,VLCをストリーミングサーバとして送信し,ネットワーク上の別のPCで再生することもできました.どうように,D
-VHSデッキをつないでみました.デッキの機種によって外部からのアナログ映像を常にIEEE1394端子にmpegで流すものとそうでないものがある
らしく,デッキにカメラをアナログで接続させて映像をVLCに認識させることができるものとできないものがありました.VLCが映像を取り込むことができ
れば,やはり映像ストリームをネットワークで送ることができました.
やってみて,VLCがHD映像をストリームとして出せるということには驚きました.このためのツールとしては広島大学の相原先生のグループで開発されているrobstが
あります.これと比較しますと,robstの方が,ネットワークが混雑したときに映像が乱れにくいように工夫が施されています.しかし,VLCはただ単に
カメラからのデータを垂れ流しているので,ネットワークが混雑したときに簡単に映像が乱れてしまうという違いがあります.
本来の国体中継とは違う話題になってしまいましたが,HD映像を再配信したシステムに関連したものですので.ここに示しました.
謝辞
今回,多数の映像ストリームを配信していただいた岡山リサーチセンター,岡山県などの関係者の皆様に感謝します.今回は多数の映像を24時間流し続けて
いただいたおかげで,いくつかの試してみたいことを時間の制約を気にせずに自由にすることができました.また,先にも述べましたように,一部の実験は鳥取
県情報センター様のご協力をいただき実施することができました.また,鳥取県教育センター様,鳥取短期大学様には映像の受信をしていただきました.併せて
感謝いたします.